さよならまぼろし

一次創作サイト

その他

造花の約束

春は妖精の季節だと思う。 フリージア、ネモフィラ、チューリップ、ガーベラ、カーネーション、すべての花に春の妖精が宿っている。 妖精は陽気に誘惑されてやって来て、息吹と恵みを与える。妖精というものは多くの人間が想像する通り愛らしく、善良な存在…

通販サイトで購入した怪しげな香水使ったら職場の年下美形社員からモテモテになった話

その香水を見つけたのはとある通販サイトでのことだった。 いつも利用しているサイトの商品一覧ページを流し見しているとふと目に留まった。聞いたことのないメーカーのラベルも取り留めて特徴のないそれが、なぜか無性に気になった。 好奇心のままにクリッ…

斜日の陽は影を伸ばして

西の空が茜色に染まり始めたころ、ぼくはひたすら下を見つめていた。 下を見ながら歩いていると危ないとかいつも胸を張って前を向きなさいだとかよく母さんに言われるけど今はそれどころじゃない。ぼくは今、遠くの砂利道からずっとここまで一つの石を蹴り続…

彼と私の絵空旅行

「億万長者になったら世界一周旅行がしたい」 彼が突拍子もない思いつきを話すのはいつものことだが、"億万長者になったら"だなんて仮定の話を嫌う彼が珍しい物言いをすると思った。さしずめ、世界一周旅行を話題に出したのはこの前貪るように読んでいたヴェ…

甘えたがりの攻防

「そういえば、そっちの方で少年の面倒を見ていると聞いたが...」 「ああ、ユーリイ。愛称はユーラチカというんだが例の奴隷商から買い取ってな。 我々の任務の補佐として今教育している最中だ」 「それは大変だ。年下の世話はどうだ?やはり聞き分けが悪いか…

悪魔の契約

「君は父親に捨てられたんだ」 平坦とした声が風と共に吹き抜けていく。目の前の男の声色は冷たく感情がこも っていなかった。たった一言なのにその言葉は確かに少年が直面している現実を突きつけるには十分すぎるものだった。 「君の父親は君を生置にして一…

冒瀆的宇宙生物が地球に飛来してきたらしい

さあさあと静謐な音を立てながら立ち上る水柱。 青とても公園の噴水で見られるような光景ではなく、ただその状況に呆然と立ち尽くしていた。 水柱のできた噴水の前に立つのは一人の男。ただ立ち尽くしている少女の前に居るのは、瘦身で背の高い男だった。青…

「彼と私」シリーズ

一 「優しさなど毒にも薬にもならない」などとどこかの誰かが言ったが、そんなのはでたらめだ。現に、彼の優しさは私にとって"薬"になったではないか。 二 いつもあの背中を追い続けている。しかし、ふと目の前にあの背中がないことに気づくのだ。背中ではな…