さよならまぼろし

一次創作サイト

碧い瞳は美男の証

碧眼の怪物

その碧眼は知っている。わたしが彼を畏れていることを。 その碧眼は知っている。わたしが正直者ではないことを。 その碧眼は知っている。わたしが真人間ではないことを。 その碧眼はわたしに教えている。彼が人ならざる者であるということを。 いつだって彼…

碧い眼は美男の証 6

朝目が覚めると、フィリックスは慌てて支度を始めた。 ベッドの中でしばらく昨日のことを思い返していたが、自分の仕事のことを思い出してゆっくりしていられないと気づいたからである。時計が無いので今が何時なのかは分からなかったがもし遅れたら大変だ。…

碧い眼は美男の証 5

目覚めると先刻と変わらない蕭々とした部屋の景色が広がっていた。 ベッドに入って、未だ埃っぽい空気を吸った。時計が無いので時刻はわからないが、窓から見える外は真っ暗で朝ではないということがわかる。フィリックスは寝直そうかと瞼を閉じて暫くじっと…

碧い瞳は美男の証 4

四階に辿り着き、端に在る大人一人ようやく通れそうなほどの幅の物置部屋に入るとグラントリ―は梯を取り出し天井に向かって掛けた。 矩形のタイルの一つを剥がすと、タイルがあった向こうに何かが在るのが見えた。フィリックスがそれを見て驚いていると、グ…

碧い眼は美男の証 3

契約が終わり、部屋から出るとグラントリーは湯浴みをさせてやるとフィリックスを浴室に連れていってやった。 フィリックスはそのことに感激した。仕事終わりで泥塗れの上今までにないほど汗を流したので、体の汚れを水で洗い流せるのは恐悦至極なことであっ…

碧い眼は美男の証 2

"> "> ふと歩いているとフィリックスは一軒の家に目が留まった。茶色い煉瓦の四階建ての家。隣とごく狭い隙間しかなく敷き詰められるよう建っていて、至って普通の何処にでもありそうな家だ。しかしフィリックスはどうしてかこの家のことが気になってしまっ…

碧い眼は美男の証 1

此世は至極理不尽にして不合理な事柄が横溢している。 真善美から悖り、寥落し猖獗をきわめたこの世から人々に見隠されるのは殺人と尾籠な享楽と不貞と怪異で或る。 怪奇とは彼世の此世の境に住い、精神世界を人の眸に見える”形”となって顕現し、夙に時運な…