日野業子は元は内裏の女官で典侍だった。 しかし主上の御目にかなうこともなくもう二十四だというのに未だに嫁に行けていない。自分を貰ってくれる男性などいないんじゃなかろうか、いっそ尼にでもなってしまおうかとすっかり自信を無くしていた。そんな時、…
まだ自分が手児奈だった頃、朧げな記憶の中にあの人はいた。邸の庭先に植えてある桜の木の傍に佇んでいる姿がやけに脳裏に焼きついている。私はあの人の姿を見ると乳母の元から離れて一目散に駆け出した。拙い足取りをしながらも近寄ってくる私をあの人は戸…
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