さよならまぼろし

一次創作サイト

2022-08-01から1ヶ月間の記事一覧

七十七年先の君を想ふ

七十七年前の彼に捧ぐ * 海が割れるんじゃないかと思うほどの轟音がした。 その一瞬音が消え、次第に耳鳴りのように高い音が鳴り響く。再び聴覚が鮮明になったとき、先程までは聴こえなかった音が近くからした。水が流れる音だ。落とされた爆弾によって甲板…

ほととぎすの花は咲かない

声が聴こえる。誰かが己を呼ぶ声が。 「──しょ、御所!」 すぐ傍で声がしたのと同時に瞼を開いた。目の前に見知った天井が広がる。 するとそこに見慣れた顔が覗いた。その人物が誰なのかを認めると同時に顔を勢いよく上げた。 「わっ」 「三郎…!」 此方が突…