「そういえば、そっちの方で少年の面倒を見ていると聞いたが...」
「ああ、ユーリイ。愛称はユーラチカというんだが例の奴隷商から買い取ってな。 我々の任務の補佐として今教育している最中だ」
「それは大変だ。年下の世話はどうだ?やはり聞き分けが悪いか」
「最初こそは心を開いてくれるまで時間がかかったが、今でこそ非常に懐いてく れている。いや、兄弟はともかく家族がいた記憶すらないから試行錯誤しながら接していったんだが、思いのほか情が湧いてしまってなあ。自分でも驚いている。」
「へえ。じゃあ弟みたいな存在ってことだな」
「年が離れた弟だな。いや、これが可愛くて可愛くてしかたない。随分甘えたが
りでな、膝の上にあがらせて撫でてやると喜ぶんだ」
「ん···?」
「毎晩ねだってきてな。私に撫でてもらわないと眠れないそうだ」
「えーと...彼、いくつだったか?」
「...? 14だが」
「14になってその扱いは駄目だろう。小さい子供ならともかく...少年なら尚更だろう」
「確かにたまに遠慮しているようなことはあるが本人が甘えたいようだからなあ」
「......おいおい」
「彼は売られるまで孤児院にいたそうなんだ。物心つく前に両親と引き離されたせいで親からの愛情を禄に受けていない」
「···············」
「私がその親の肩代わりといっては何だが、縁があってこうして一緒にいるんだ。 せめて親の代わりに愛情を注いで、人並みに愛,というものを知ってほしいと思うのさ」
「·····そうか」
「まぁ、でも確かに私のやってることはただのお節介だから寧ろ彼にとって重荷になってしまっている可能性もあるな。」
「ユーラ、おいで。撫でてやろう」
「···············」
「よしよし良い子だ。ユーラ、こうして私に甘えるのは好きか?」
「・・・好きだけど」
「そうか、それなら良かった」
「・・・どうして?」
「いや、今日友人と会ってきたんだがこのことを言ったら『14にもなってそんなことするのはおかしい』と言われてしまってな。子供扱いしすぎなのかと思ってしまってな」
「...............このこと、他の人に言うなよ」
「ああ、悪い悪い。信頼出来る友人だからつい話してしまった。怒っているか?」
「もう話すなよ」
「ああ、そうする。ごめんな」
「...には、人前でやらないのとヒトに言わないでいてくれたら、 別にいい。トーネチカに撫でられるのは好きだから」
「.......! そうか、それなら良いんだ。両親が君にしてやれなかったぶんまで私が甘えさせてやらないとな。素直になったな、良い子だ。ご褒美にキスしてやろうか?」
「そういうのはいい」
「誰も見ていないのに?」 そういう問題じゃない...それはいらない」
「まぁ良いが。何だか寂しいな」
「したいのか?」
「可愛い弟のためなら頬や額にキスなんて容易いな」
「なんだそれ...」